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類猿人に告ぐ!日本の資格・眼鏡士を知ってるか?

目玉焼きの朝、類猿人の夜

仕事が立て込むといつも目玉が痛かった。脳味噌暴走まんまアクセル踏みっぱなしで一区切りつけゆっくり目玉を養生させるのが、オイラスタイルだった。だが、その時は様子が違った。
周囲に事情を話し、可能な限りデジタルを絞ってデトックスを試みた。ところが、だ。二週間経っても痛みが引かない。しかも痙攣してる。目玉の奥の更に後ろ側がジンジン熱くて痛くて、夜中何度も目が覚めた。冷たいタオルをあててもビクンビクンと痙攣がとまらない。鏡を見ると目玉がトリコロールだ。白目が真っ赤だった。魚屋の鯛だったら見切り品だ。ほら、ホラーだ。写真撮る数秒間すら痛くて目を開け続けられない。眼科に行ったって結果は知れてる。「目を休ませましょう」。単なるステロイドとビタミン剤だろ。そんなののために薬で無理やり瞳孔を開かれ、網膜に強烈な光を浴びせられるのは御免だ。金に糸目つけず高級ブルーベリーを食い続け、痛みが引くまでに一年近くかかった。そして、それまでとは違う目玉になっちまった。

「フライングトースター」に焼かれた類猿人

1980年代のテック野郎は、2026年の今、目玉を壊していることだろう。
当時、オイラのモニタには市販のスクリーンセーバー「フライングトースター」が舞っていた。トースターに羽が生えていて、パタパタと鳥みたいに飛んでいる。それ無しにてはモニタが焼き付いてしまうこともある強烈な光。それを瞬き回数少なく凝視し続ける目玉が焼かれないはずがない。黒地に黄色のピッコンピッコン、スクロールする光を毎日7-11(セブンイレブン)に白旗挙げさせる勢いで追いかけた。
類猿人(タイプミスではありません)は、地平線かなたの敵や餌を見つけるために4万年かけて最適化した。その子孫が我々だ。それが今、手元60cmのモニタや40cmの書物を凝視し、一日一度も全力疾走しない。遠視が生き残る環境から、近視がデフォルトの時代へ。その齟齬は、斜視、複視、自律神経失調症、緑内障、そのほか失明を招いているのではないか。
オイラは医者じゃない。経験を書くだけだ。「ほーらほらほら、地平線だぞ」。目玉に、今、地平線を見ていると思わせて騙し騙し薄氷踏みつつ凌ぐ日々だ。 目を悪くしてからでも遅くはないが、できることなら目を悪くする前に「凸レンズ」をかけろ。毛様体筋を楽にしてやれ。両眼視必須の作業なら基底外方(きていがいほう)プリズム併用も悪くない。人差し指を立てて顔に近づけると目玉が真ん中に寄ってゆくだろ。その際にギン張る内直筋を楽にしてやれ。単眼で可能な作業ならアイパッチだ。右目用左目用オイラは眼鏡を2枚持ってる。目玉を騙し、リラックスさせる。漫然とベルトコンベア式の眼鏡屋に入って凹レンズを処方されたら、目玉にトドメを刺されるぞ。各眼に6つある外眼筋そして毛様体筋・水晶体・網膜・角膜・瞳孔、オール棺桶、最後の釘を打たれるぞ。

ミラノ潜入と、断念したベスパ

ローマの休日よろしくスペイン坂をベスパで阿弥陀走りしたくて、国際運転免許証の必要要件である日本の400cc免許を取ろうとした。それを契機にプリズム処方に気づいた。コンタクトレンズでも処方可能なのかもしれないが限界がある。だから眼鏡だ。だけど、カッチョワリイ眼鏡フレームはやだ。そだ、ミラノだ。
ご縁があって運よく偽の社員証を作ってもらい、ミラノ眼鏡見本市に潜入した。中華勢の異常な元気さに圧倒された。連中は一体何を食ってんだ。オイラは衰弱してシャワーも浴びれずベッドに倒れ込む日々だった。朝、老体に鞭打ってシャンプーし「グンモニ!」。
商談が終盤に向かうとアタッシュケースに米ドルぎっしり。信用が全てだ。フリータイムに他ブースを徘徊してスパイと疑われ「我、どこのもんじゃ!」と睨まれた。振り返るとアホの極みだが、当時は、イケてる眼鏡をかけたイケてるオイラになりたくて、往復の飛行機代を捻出して「真実の眼鏡」を希求した。フレーム選びはレンズ処方確定後!であることを学んだのもこの見本市でだった。見た目至上だがそれ以上に目玉至上だ。

偽社員証とマネロンの行方

眼鏡の世界は深い。ある眼鏡屋は、なかなかに大胆な節税の方法を教えてくれた。その「稼いだ金」の行き先は、超不採算部門である子供用フレームの開発・製造に惜しみなく注ぎ込まれるのだという。
眼鏡に人生を賭した連中の関心は、車のエアーバッグが開いても凶器にならない日本人御用達ノーズパッド、適度に丈夫で、適度に軟弱な眼鏡、ファイアーマンがブラボする空気呼吸器面体の内側にかける熱に強いフレームとレンズ、剣道や野球のキャッチャーの防具の内側に最適化した眼鏡、バスケットボールのゴール下で肘鉄くらっても凶器と化さない眼鏡に迄向いている。日本人は、概してオタクだ。

眼鏡作りの指揮官は、貴方だ

レンズは認められた誤差の範囲で製造される工業製品だ。光芯はレンズのど真ん中じゃない。日本の頑固な眼鏡士は、レンズ一枚一枚の「光芯」を特定しフレームに合わせて加工する。
ダミーレンズにマジックで黒目位置を特定する。伏し目、寝っ転がり、腹の上のタブレット。光芯をどこに置くか。眼鏡屋任せじゃダメだ。指揮官は貴方だ。

最後に、類猿人に告ぐ

焼けるまでは皇室御用達だった四谷の朝倉眼鏡、皇室御用達の村田眼鏡補、渋谷の小倉眼鏡で勉強させてもらい、今は、車で30分の信頼できる眼鏡屋に目玉の命を預けている。この出会いがなければ、今頃オイラの目はどうなっていたか. 今も不自由だ。金(かね)と日々の工夫で凌いでいるが、若い頃の無茶を後悔してる. みんな、気をつけろ。オイラみたいになるな。
この不器用で愛らしい日本の眼鏡士を置いている眼鏡屋をどう思う? いい眼鏡が出来上がって目玉が喜んでくれるなら、類猿人・コード屋・目玉・眼鏡店、ウィンウィンウィンだろ。